2023年4月1日に新たに「こども家庭庁」が、発足します。
名称に「家庭」を入れるか入れないかの論争も報道され、話題になりましたよね。
「こども家庭庁」は、児童虐待、子どもの貧困、少子化など、これまで複数の省庁が管轄していた子どもに関する政策を一元的に担う新たな組織で、縦割り行政の解消を図ることを目的としています。
子どもに関わる省庁といえば、幼稚園は文部科学省(文科省)が、保育所は厚生労働省(厚労省)が、認定こども園は内閣府が管轄しており、このほかにも警察庁や国交省など多岐にわたっていますよね。
では、なぜ「こども家庭庁」が新設されるのか、疑問に思った方もいるのではないでしょうか。
今回は、「こども家庭庁」について調べてみました。
こども家庭庁の役割は?
「こども家庭庁」は、これまでの多岐にわたり別々に行っていた子どもに関する政策を一元化し、子ども政策全体の司令塔(リーダー)となって、抜けや漏れがなく、迅速な対応を担う組織としています。
「こども家庭庁」の職員数は300人ほど(自治体や民間からの人材も含め)を予定しているそうですが、どのような体制になるのでしょうか。
「こども家庭庁」は、内閣総理大臣の直属の機関として内閣府の外局に設置され、子ども政策担当大臣、こども家庭庁長官が置かれます。
担当大臣は勧告権をもっており、ほかの省庁に改善を求めることができるようです。
また、「こども家庭審議会」も設置され、有識者メンバーや自治体などとの情報共有のほか、子どもや親、若者などから直接意見を聞き、子ども政策の充実を図るとしています。
そして、「こども家庭庁」のなかは、以下の3つの部門に分かれるようです。
こども家庭庁3つの部門
●企画立案・総合調整部門(全体のとりまとめ)
・子どもや若者、子育てをしている人の意見を聞いて、子ども政策全体の企画・立案
・子どもの家庭状況や支援内容などのデータベースを整備
●生育部門(子どもの生育をサポート)
・妊娠・出産の支援や母親と乳児の健康支援
・保育所や幼稚園など就学前の子どもの生育の基準を策定
(保育所、幼稚園、認定こども園で、教育や保育の内容に違いがないようにする)
・小中高生の居場所づくりや放課後児童クラブの支援
・子どもの安全対策(性的被害や事故の防止)
→日本版DBSとCDR(チャイルド・デス・レビュー)の導入の検討
●支援部門(特に支援が必要な子どもをサポート)
・子どもの虐待防止といじめ対策
・ヤングケアラー(家事や家族の世話などを行っている子ども)の支援
・施設や里親のもとで暮らす子どもの生活の充実や社会に出ていくための支援
・子どもの貧困やひとり親家庭の支援
・障害のある子どもの支援
日本版DBSとは
日本版DBSとは、子どもと関わる仕事をする人の性犯罪歴をチェックし、性犯罪歴の有無によって雇用を制限するというものです。
性犯罪者の再犯率が高いことから、子どもへの性被害防止のため、導入が検討されています。
CDR(チャイルド・デス・レビュー)とは
CDR(チャイルド・デス・レビュー)とは、子どもが事故などで亡くなった際の経緯を検証し、データを収集して再発防止につなげるというものです。
子どもは亡くなった場所で管轄が異なり、データが蓄積されにくいため、導入が検討されています。
こども家庭庁のメリット
政府は「こども家庭庁」のメリットを次のようにあげています。
・抜けや漏れのない迅速な対応ができる
・妊娠期から大人になるまで継続的に支援する体制・施策を推進できる
・安心して子どもを生み育てる環境が構築できる
確かに、(実現すれば)大きなメリットと言えそうです。
また、小さな?身近なことでいえば、内容によっては別の窓口で行っていた役所での手続きが一つの窓口で済めば、手間が省けメリットになります。ぜひ、こちらも一元化していただきたいところですね。
こども家庭庁のデメリット
いいとこずくしにみえる「こども家庭庁」にデメリットはあるのでしょうか。
幼保一元化は先送り
保育所や認定こども園は、「こども家庭庁」への移管が決まりましたが、幼稚園や義務教育に関してはこれまで通り文科省が管轄し、幼保一元化はまた先送りされることになりしました。
就学前の子どもの教育、保育の内容の基準を策定すること、いじめ問題に関することについては「こども家庭庁」が管轄しますが、新たな縦割りの発生になるのではと考えられます。
財源のめどは立っていない
先進諸国の子育てに手厚い国では国内総生産(GDP)比を3%以上使っているのに対し、日本では2019年度のGDP比は1.73%しかありません。
政府は、予算を倍増する考えを示していますが、どこからいつまでに倍増するかなど具体的には示しておらず、めどは立っていないのではないでしょうか。
人手不足
子どもに関わる問題が増えるなか、児童相談所の職員や学校の教員といった子どもと関わる人材の不足も深刻化しつつあります。
新たな組織を作ることは、さらなる人手不足になるのではと考えられます。
新たな利権が増える
SNSでは、「こども家庭庁」の創案当初も「選挙のためでは」などといわれていましたが、
今回も「デジタル庁やこども家庭庁、危機管理庁など組織を増やすだけで、やってる観を出そうとしているのでは」「官僚のポストを増やし、新たな利権を作るためでは」などの声もあがっていました。
来年4月の発足に向けて、さらなる議論や課題などが公になると考えられますが、「こども家庭庁」の「Children First(子ども最優先)」「こどもまんなか社会」の政策に期待したいですね。
こども家庭庁はなぜ必要?設置の理由
いじめ、不登校、児童虐待、貧困、少子化など子どもに関わる問題は、年々深刻化し、残念ながら悲しいニュースが後を絶ちません。
ちなみに、子どもが事故などで亡くなった際、亡くなった場所で管轄が異なるのをご存知でしょうか。平成28年に0~6歳の子どもは内閣府になったようですが、省庁がまたがるためにデータの蓄積がしにくい現状のようです。
子どもの死亡事故の管轄
家庭 → 警察・法務省・厚労省(虐待の場合)
幼稚園 → 文科省
保育所 → 厚労省
認定こども園 → 内閣府
公園・川 → 国交省
国立公園 → 環境省
遊園地 → 経産省
手すりなど → 消費者庁
亡くなった状況がわからぬ遺族が、情報開示を求めた際に管轄をたらい回しにされて、何年も開示されなかったケースや連携がうまくいかず命を落とす虐待ケースなどもありました。
これらのケースは、子どもに関わる省庁が多岐にわかれ、縦割り行政による弊害が要因の一つといえるのではないでしょか。
一刻も早くこのような縦割り行政の弊害を解消し、「こども家庭庁」が子ども政策全体の司令塔となって、抜けや漏れがなく、迅速な対応が必要であると考え、すべての子どもの命と権利を守るために創設されたようです。
まとめ
2023年4月1日から新設される「こども家庭庁」について調べました。
「こども家庭庁」とは、児童虐待、子どもの貧困、少子化など、これまで複数の省庁が管轄していた子どもに関する政策を一元的に担う新たな組織で、縦割り行政の解消を図ることを目的としています。
しかし、「幼保一元化」のみを議論する時間がないことや文科省と厚労省の利害調整に時間がかかる恐れから、今回も「幼保一元化」は見送られるかたちとなりました。
また、予算を倍増することは明言されていますが、具体的にはめどが立っていないなど、課題も多くありそうです。
すべての子どもの命と権利が守られ、みんなが安心安全に暮らせる日本となりますように、切に願います。
最後までご覧くださりありがとうございました。